1. グリシンは20種類あるアミノ酸の基本となる最も小さな構造で、多くのタンパク質の構成成分です。なかんずく、コラーゲンのアミノ酸組成はグリシンが1/3を占めます。
  2. グリシンの発見は1820年Braconnotによりコラーゲン(変性させたものをゼラチンという)の加水分解物から結晶として得られ、甘味を呈することからゼラチン糖sucre de gelatin)と名付けられたが、糖とは性質が違いから、グリシン(glycine)の名が使われるようになった。ギリシャ語での意味はglykis(=sweetおよびlyki(=pleasant, bright)の意味をもち、ineは類似のものに対しての接尾語。すなわちグリシンは甘いもの、おいしいものという意味。グリシンの甘味は上品な甘さである。
  3. グリシン属(Glycine属)というマメ科植物があり、これには枝豆(Soybean)を含む多くの植物がふくまれる。Glycineの名前の起源も“sweet plant”にあるという。身近なツル性のマメ科植物に名づけられたフジ(藤、wistaria)がありWisteria属に分類されている。Wisteriaは人名にもとづく。
  4. 藤が西洋に伝わったのは中国からキャプテンWilbankが1816年にイギリスに持ち帰ったものとも、別にアメリカからともいう。日本のフジ(ヤマフジ)、中国のフジやアメリカのフジはそれぞれ少し違うところがあるようだ。
  5. なぜ、ヨーロッパでフジがglycineという名前として呼ばれているのだろうか。ここで登場するのが1914年スイスにEugene Maylanによって設立された時計会社Glycine-Watchであって、この会社のお蔭でGLYCINEの名は誰でも知ることになる。Glycine社の旧建物にMaylanが愛でたという藤がある。
  6. フランスのノルマンディに、豪華な美しいこの花に因んで名づけられたla Glycineというレストランがあり、現在もそこの入り口に藤の棚がある。
  7. こうして、ヨーロッパではフジの花にflora de Glycineの名が使われるようになった。